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成年後見人とは?
みなさんは「成年後見人」がどんな人か説明できますか?成年後見人制度は、2000年から始まった制度です。誰もが制度を利用する可能性がありながら、まだまだ認知度は高くありません。この記事では、成年後見制度や成年後見人について詳しく解説しています。みなさんやみなさんの家族が制度の利用を考える際の参考にしてください。
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成年後見人とは?
認知症や知的障害、精神障害、疾病、事故による脳の機能障害などにより、判断能力が不十分な人が不利益を被らないように、法律的に保護、あるいは支援するための制度が成年後見制度です。成年後見人は制度を必要とする人に代わって、預貯金を管理したり、介護サービスを利用するための契約を結んだりします。
成年後見制度は、判断能力が不十分な人が利用する「法定後見制度」と、まだ問題なく日常生活を送れる人が判断能力が衰えたときのために備えておく「任意後見制度」に分けられます。
成年後見人制度が始まった背景
2000年に介護保険が始まったことで、介護サービスを受ける際などには周りの人たちが一方的に決めるのではなく、本人の意思を尊重するようになりました。しかし、それでは認知症などで判断能力が低下している人たちは、サービスが受けられなくなってしまいます。そこで本人の代わりにサービスを選んだり、契約をしたりするための成年後見人制度が作られました。
法定後見制度
法定後見制度は、制度を必要とする人の判断能力の程度によって「後見」「補佐」「補助」の3つに区別されます。家庭裁判所が「後見人」「補佐人」「補助人」のいずれかを選出し、制度を受ける人はそれぞれ「被後見人」「被補佐人」「被補助人」となります。
「後見」は、本人に適切な判断能力がまったくないとされる状態を、「補助」は、日常生活には問題がないが、普通の人よりは判断能力が多少不足する程度の状態を指し「補佐」はその中間にあたります。
「後見」「補佐」「補助」では、与えられる権限や、その範囲が異なります。後見人には財産管理の代理権と取消権が与えられ、たとえば、被後見人が行った買い物をなかったことにできます。
「補佐」では、借金や相続の承認、家の新築や増改築など、民法13条1項にあげられる特定の行為についての同意権と取消権が与えられます。申し立てがあれば、これ以外の同意権と取消権、特定の法律行為についての代理権も与えられます。「補助」の場合は、申し立てがあったときのみ、借金や相続の承認、家の新築や増改築など、民法13条1項にあげられる特定の行為の一部についての同意権と取消権が与えられるようになっています。
また、制度を受ける人が医師、税理士、会社役員、公務員であった場合は、「後見」あるいは「補佐」と判断されると、その資格や地位を失います。さらに後見人は、印鑑登録ができなくなります。
任意後見制度
判断能力が十分でない人が利用するのが法定後見制度です。その一方で、任意後見制度とは、現時点では判断能力が十分にあり日常生活にも何の問題もない人が、将来適切な判断ができなくなる場合に備えるための制度です。
法定後見制度では、後見人等は家庭裁判所が選出するので、本人や家族が希望する人物が立候補したとしても後見人等になれない場合があります。しかし任意後見制度なら、本人の判断能力があるうちに、前もって後見人と後見人にしてもらいたいことの内容を契約によって決めておくことが可能です。
成年後見人の役割
成年後見人が行う職務は主に、財産管理と身上監護、そしてそれらについての報告です。法律行為を補助するのが成年後見人の役割なので、家事や介護をする必要はありません。
財産管理には、預貯金の管理はもちろん、不動産の管理、遺産分割協議などの相続手続きも含まれます。あくまでも本人の財産を守るのが目的なので、生前贈与をしたり、資産運用することはできません。
身上監護では、主に介護や福祉サービスを受ける際や施設に入るための契約、入院の際の手続きを本人に代わって行い、適切なサービスが提供されているかの確認もします。
基本的には1年に1回程度、家庭裁判所から後見事務の報告が求められるので、後見人は収支が発生するたびに帳簿へ記録し、レシートや領収書の保管をしておくことが求められます。
成年後見人が必要になるのはどんな場面?
子どもが高齢の親が認知症になっていることに気付いたり、銀行や不動産屋から後見人をつけるように勧められたりすることが後見人制度を利用するきっかけになることが多いようです。ここでは、成年後見人が必要となる場面の例をいくつか紹介します。
・通信販売や訪問販売で買ったものが部屋中に溢れていた
・悪徳商法の被害に遭ってしまった、あるいは万が一遭ったときに備えたい
・銀行で認知症だと伝えたら、口座が凍結されてしまった
・不動産を売却したいが、持ち主が介護施設に入居しているなら、成年後見人を立てないとできないと言われた
・判断能力が低下したが、頼れる家族が近くにいない
・認知症の人を介護に入れたい
・子どもが障がいを持っているが、将来が心配である
いずれのケースにおいても、本人の判断能力の低下や衰えが原因で、適切な法律行為が行えなくなった場面で成年後見人が必要になります。
成年後見人になれるのはどんな人?
成年後見人になるために必要な資格などはないので、基本的には誰でもなれます。現状では、親族以外では、弁護士や司法書士、社会福祉士が選任されることが多く、複数人が後見人になることもあります。
ただし、以下の場合に当てはまる人は、成年後見人になることができません。
・未成年者
・家庭裁判所から法定代理人、保佐人または補助人を解任された人
・破産者
・本人に対して裁判をしたことがある人と、その配偶者および直系家族
・行方不明者
これらの項目は民法847条で定められていて、法定後見人と任意後見人のどちらにも適用されます。
重要なのは、法定後見人を選出するにあたって、上記の条件に当てはまらない人が後見人に立候補したとしても、必ずしも選ばれるわけではないという点です。
親族間でいざこざがあったり、本人の財産が大きかったり、候補者が高齢だったりする場合などは、親族は後見人に選ばれにくいとされています。しかし近年では、そうではない場合でも親族ではなく第三者である弁護士などの専門職の人が選出されるケースが多くなっています。
成年後見制度を利用するには?申し込みから利用の流れ
成年後見制度を利用するには、いくつかの手順を踏む必要があります。準備する書類などもあるので、利用を検討している人はよく確認するようにしましょう。
法定後見人制度
申し立て→審理→裁判→後見登記というのが、法定後見人制度を利用するまでの大まかな流れで、大体2〜3ヶ月程度の期間がかかるのが基本です。
申し立ては、必要な書類をそろえて、制度を必要とする人が住んでいる地域を管轄している家庭裁判所に提出をするところから始まります。本人とその配偶者や子ども、四親等内の親族以外にも、適切な申立人がいなければ、市町村長でも申し立てができます。なお、一度申し立てをした後は、裁判所の許可がない限り取り下げることはできません。
申し立てに必要な書類の一つに、医師による診断書があります。この診断書が「後見」「補佐」「補助」を決める際の判断材料になります。他に必要な書類は事案ごとによって多少異なりますが、家庭裁判所に直接行ってもらうほか、インターネットや郵送での取り寄せもできます。
申し立てがされると、本人や申立人は家庭裁判所で面接を行います。裁判官の判断によっては、親族への意向照会が行われたり、医師に鑑定を依頼したりすることもあります。
その後、後見開始の審判が下されると成年後見人に告知・通知され、2週間以内に不服の申し立てがなければ、審判の効力は確定したとみなされます。
審判が確定されたら、後見人に関する情報を登記します。後見登記ができたら、登記事項証明書を取得するときに必要な番号が通知されます。登記事項証明書は、本人の預金口座の解約や各種手続きの際に使います。
後見人は審判の確定から1週間以内に財産目録を提出しなければいけないので、本人のすべての財産を調査して、一覧にします。その後も定期的な報告が必要になります。
任意後見人制度
任意後見制度を利用しようと思ったら、任意後見人となってくれる人と公証役場にて任意後見契約を結び、法務局に登記申請しておきます。
その後、任意後見制度が必要になった時点で必要書類をそろえた上で家庭裁判所に任意後見監督人選任の申し立てをしたら、任意後見監督人の選任をもって契約の効力が生じます。
任意後見監督人は、後見人が契約通りに仕事をしているかの確認をします。そのため、任意後見監督人には、弁護士や司法書士などの第三者が選ばれることが多いようです。
成年後見制度を利用するための費用
成年後見制度を利用するためには、準備段階で申立てや証書の作成に費用がかかるほか、後見人等への報酬が発生します。
申立てにかかる費用
・切手代:3,000〜5,000円
・申立て手数料:800円
・登記手数料:2600円
・医師による診断書の作成費用:病院によるが、数千円の場合が多い
・鑑定費用(必ず行うわけではない):5〜20万円
・住民票や戸籍謄本の発行費:市町村ごとに異なるが、戸籍謄本は450円、住民票は300円程度のところが多い、郵送で取り寄せる場合は別途郵送費がかかる
・登記されていないことの証明書:300円程度
弁護士や司法書士に依頼する場合は、上記の費用に加えて15〜20万程度がかかります。また、家庭裁判所によって必要な書類は異なるので、事前に確認しておくことが大切です。
任意後見契約公正証書の作成にかかる費用
・公正証書作成手数料:11,000円
・登記嘱託手数料:1,400円
・登記所に納付する印紙代:2,600円
・切手代:600円程度
・正本謄本の作成手数料:250円
後見人等への報酬
また、後見人は、報酬の請求ができます。金額は裁判所が申し立てに基づいて審理して決めます。管理財産額が5,000万円以下なら月額2万程度、1,000万〜5,000万円なら3、4万円程度、5,000万円以上なら5、6万円が相場と言われています。
成年後見監督人が選任されている場合も、報酬が発生します。こちらは、管理財産額が5,000万円以下なら月額1、2万程度、5,000万円以上なら2.5万〜3万円が相場だとされています。
成年後見制度を利用する際の注意点
成年後見制度を利用した人の中には、制度を利用したことを後悔する人が少なくありません。その原因に考えられる大きな原因は次の2つにあると考えられます。
・近年では、後見人には第三者が選ばれるパターンが多い
・一度成年後見制度を利用したら、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまでやめられない
制度が始まった2000年時には配偶者や子どもなどの親族が後見人等になることがほとんどでしたが、後見人による横領事件などが起き、今では第三者が後見人を務めるケースが多くなっています。
制度を利用した人からは「後見人になった弁護士がなかなか会いに来てくれない」「ろくに状況も知らないのに報酬だけもらっていく」「介護等に必要なお金さえ出してくれない」といった声があがることもあります。中には同居を約束していたのに、施設に入れた方が安いからと言って第三者の後見人によって離ればなれにされてしまった親子の例もあります。
たとえ銀行や不動産から勧められた場合でも、成年後見制度の利用を視野に入れた際には、本当に必要なのかを今一度考えるべきでしょう。すでに制度を利用している人の事例を調べてみてもいいかもしれません。場合によっては、各市町村の地域包括センターや、法律事務所、司法事務所での相談も検討してみてください。
まとめ
ひとくちに成年後見人と言っても、任意後見人と法定後見人があったりとその内容は各ケースごとに異なり、複雑です。また、制度を利用することが必ずしも本人やその家族にとって最善の方法であるとも限りません。成年後見制度を利用する際には、きちんと内容を理解して、後悔のないようにしたいですね。
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